散歩道<1068>

                       経済気象台(34)聞きビジネス

 脳に関する研究が進んでいる。脳の構造の違いが男女の違いが表れる、と著名な女性医師が本の中で述べている。女性の脳の構造は、他人との共感に反応しやすいように出来ている。だから、自分の気持ちをわかって欲しいと欲求し、おしゃべりをするという。しかし、女性が共感の相手を求めて話しても、会話に解決を求める男性は求めてもいないアドバイスを送る。女性といい関係を保つためには、女性の気持ちを肯定するように相槌(あいづち)をうち、時には鸚鵡返し(おうむがえし)しに相手の言葉を繰り返すことも大切だ、と説明している。会話を通じて、共感して欲しい女性と、解決を求める男性。今、自分の意見や気持ちを聞いて欲しいと思う人は多いようだ。しかし、一方で、人の話を聞く事が出来る人は意外と少ない。職場や、コミュニティー などの会議で、話をしている最中に、誰かが割り込まれたり、早合点されたりした経験はだれもがお持ちだろう。論客が登場するテレビの討論番組ですら、状況は同じである。話をしたい。しかし、聞く事が苦手の人が多い。ぎくしゃくした関係が日本人のストレスを高めている。それでも携帯メールやインターネットの登場は、そうした人たちの受け皿として機能している。中でも自分の日記を公開するブログが人気を集めている。この3月の総務省の調査では、のべ868万人がブログやSNSに登録している。日常、ふと思ったことを、普段着の言葉で書きとめる。「ひょっとしたら、誰かが読んでくれるかな」くらいの送り手と受けての緩い関係性が生まれている。きちんと整理された情報を発信し、その情報を誰かが受信する従来のコミュニケーションとは違う、新しいコミュニケーションの形だ。他人との新しい関係性が生まれ、新たな市場を生み出している。

'06.6.2. 朝日新聞