散歩道<1061>
時流自論・米「広報外交」の光と影(1) (1)〜(3)続く
ハリウッドの人気俳優ジョージクルーニが共同脚本・監督を務めた公開中の映画「グッドナイト&グッドラック」を見た。1950年代初頭の米国を覆った「赤狩り(反共産主義者ヒステリー)」の首謀者ジョセフ・マッカーシ−上院議員に対し、毅然と立ち向かった国民的ニュースキャスター、エドワード・マローが主人公だ。「米国は、国内の自由をないがしろにしたままで、世界における自由の旗手となることは出来ない」というのがマローの台詞(セリフ)に今の米国の思いが重なっている。映画ではふれられていないが、1961年、マローはジョン・F・ケネディ大統領に請われ、米国広報・文化交流庁(USIA)の長官に就任する。海外における米国への理解やイメージを向上させるパブリック・ディプロマシーの(広報・文化外交)の担い手と言う役回りだ。その際、マローは受諾の条件として「不時着の時だけではなく、離着のときにも立ち会えること」を挙げた。政策が決定・実行されてから対応するのでは遅すぎるという意味で、ケネディもそれを了承し、国防外交政策の最高諮問機関である国家安全保障会議(NSC)への参加を認めた。この一節は「真実こそ最良の宣伝であり、虚偽は最悪である」「拙い(つたない)政策をたくみに宣伝することは、過ちをより深刻にするだけである」といった、いかにもマローらしい言葉とともに、パブリック・ディプロマシーの要諦として今でも良く引かれている。
'06.6.12.朝日新聞・ 慶応大学教授・渡辺 靖氏
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