散歩道<1042>

                   世界の窓・人間性育み「魅力ある国」に(2)

 そこで最も大切にしたいのは「人間性」の育成だ。金があれば何でもできるといった風潮の「ホリエモン現象」、欲望むき出しの「メル友ネット」の広がり、電車の優先席さえ老人に譲ろうとしない思いやりのなさ。人間の品格が改めて問われる時代である。「国や郷土を愛する心」を育てることは勿論大切だが、それはまず「人を愛する心」があって始めて成り立つ。そうした心を持っていれば、戦争被害の傷を今も感じている相手国への「配慮」も自(おの)ずとなされていくだろう。色々な所で教育の重要性が説かれている。だが、それは偏差値を挙げたり、国の指導者が思い描く愛国心を吹き込んだりすることではない。百年の大計を持って教育を考えるなら、その革新は「豊かな心」を育てる教育であり、「ネット・コミニュケーション」も大切だが、鍵は「触れ合いコミニュケーション」の再生なのである。幸い日本にはまだ輝きがある。最近の来日留学生数の推移を見てもそれは言える。05年に12万人を超え、90年代にくらべると倍増した。その約8割が中国と韓国からだ。しかも反日デモが相次いだ昨年でさえ、両国からの留学生は前の年よりも増加した。03年に以降は在日の中国人留学生の年間総数は在米国のそれを超えるまでになった。文句をいいながらどこか「惹かれるもの」があるからなのだろう。少子化が進み、経済成長が鈍化し、外国の人々との共生が程度の差こそあれ不可避なこれからのわが国にとって、「魅力ある日本の創造」は戦略的にもきわめて重要な課題だ。仮に将来、世界NO2の「経済大国」の地位を失ったとしても、「魅力ある日本」の創造が実現していれば、何も不安がることなどないのである。

'06.5.17. 朝日新聞 早稲田大学教授・天児 慧(あまごさとし)