散歩道<1031>

               三者三論・五輪なぜ誘致・福岡軸にアジア結び発信(2)        (1)〜(2)続く

 約10年前から私は「東北アジアコモンハウス」と言う考えを提唱している。様々な摩擦を抱える東北アジアの各都市が、国境を越えて穏やかなネットワークを形成し、新たな繁栄を築き挙げるイメ−ジだ。その先には東北アジア版 CSCE(全欧安保協力会議)をも見据える。福岡市は、五輪開催に際し、アジア各都市と連携する方針だという。もし五輪を機にのつながりが深まれば、緊張緩和をもたらす絶好の機会だ。新渡戸稲造はかって、「我、太平洋の掛け橋にならん」と言った。それならば、福岡五輪を「玄海灘の掛け橋」にできないだろうか。勿論選手にとっても福岡の環境は快適なはずだ。博多湾は、都市に隣接しつつ、海水浴が可能な風向明媚(ふうこうめいび)な土地。新鮮な空気を吸いながら、存分に力を発揮できる。東京はどうだろうか。都が発表した開催理念には「日本再浮上に向けた第一歩」などとあり、完全に国威発揚型だ。これでは北京など二番煎じで、とても今の日本にふさわしくない。慢性化した交通渋滞も障害だ。新しい五輪像や平和へのメッセージも希薄で、あるのは「私達はいかに豊かか」とう主張だけ。これでは「勝組」のイベントで国威発揚どころか東京発揚にしかならない。多様な都市が共存する豊かな日本を築くには、ここで福岡が頑張らないと。福岡市民の中に計画に反対する声があるのも事実だ。「財政負担が増えないか」五輪の名を借りた開発ではないか」・・・・これだけのイベントでを招致すれば様々な意見が出るのは当然。反対運動がおきない東京に比べ、よほど健全な状態だろう。不安解消の為、市は意思決定をガラス張りにして、タウンミーティングを重ねる必要がある。五輪には多くの市民の参加が欠かせないからだ。九州出身の私が福岡を押せば身びいきに受け取られるかもしれないが、国威発揚型五輪はもう終りにしよう。

'06.4.28.朝日新聞・ 東京大教授・姜尚中(カンサンジュン)