散歩道<1030>
三者三論・五輪なぜ誘致・福岡軸にアジア結び発信(1) (1)〜(2)続く
64年東京五輪は、国民に未来への可能性を強く感じさせる歴史的イベントだった。それから40年あまり、成熟した日本が再び五輪を呼ぶからには、世界に新たな五輪像を示し、独自の平和へのメッセージをこめないと意味がない。近代五輪は元々、世界中のアスリートが集い、純粋に肉体の限界まで技を競う場だった。だが、36年のベルリン五輪でナチスが国威発揚に利用し、 国力を顕示する場に一変した。この「20世紀型」の終着点が08年の北京、12年のロンドンもその延長にある。これに対し、福岡が目指すのは、「21世紀型」だ。首都級の都心に比べ小規模な財政力に見合うよう既存や仮設施設を多用する。全37会場のうち22会場を博多湾岸に集中し、新設は7会場だけに抑えた。施設整備費用は総額4860億円、地元負担は970億円で、夏季五輪招致を目指した大阪市の3分の1で、コンパクトな計画と言える。このような形で福岡が成功すれば、世界中の小都市が五輪開催に意欲を持つ。これこそ、国際オリンピック委員会(IOC)が求める、開催都市による五輪への貢献。福岡市は21世紀のスタンダードになるかもしれない。平和への貢献も期待できる。なぜなら、福岡五輪は東北アジアの政治情勢を変える千歳一寓のチャンスになるからだ。福岡は玄海灘を挟み、中韓両国と隣合わせ。この地域は今後、沿海部の中産層が台頭し、人の往来が活発になり、世界で最も変化する。
'06.4.28.朝日新聞・ 東京大教授・姜尚中(カンサンジュン)氏