散歩道<1003>

                   思潮21・「格差社会」再考(1)・焦点は敗者の対策・弱まる復活の仕組み           (1)〜(3)続

 格差社会の是非をめぐって、政治家、専門家、マスコミで論争が進行中である。日本で格差が拡大中であると、8年前に最初に言い出した私にとって、社会をどう導けばよいかを議論する上で重要なので、価値ある論争と判断している。論争は小泉首相の次の二つのコメンントで一気にもりあがった。第1は格差拡大はいわれるほど進行していない。第2は格差社会のどこが悪い、というものである。第1のコメントは内閣府の資料に基づくものである。元々貧富の格差が大きい高齢者の数が、高齢化によって増加しているのであるから、格差拡大は統計上の「見かけ」に過ぎない、というものである。高齢化とは、高齢者の中で低所得者の絶対数が増加しているという事実を意味するが、見かけとすることによって、この事実まで否定するのかという疑問が残る。私にとっては、第2のコメントの方がはるかに興味深いし、論争のしがいがある。小泉首相は「格差はどの社会でも存在する」と述べたが、これは100%正しい。問題はどこまでの格差を認めるかである。これは個人の価値判断に依存するところでもあるので、正解は無い。極論すれば、社会の構成員の投票によって民主主義の原則による多数決原理で落ち着く、格差となる。でも、これでは社会科学上からは逃げの論理である。何を基準にして格差の大きさを判断するのか、ヒントを示めそう。簡単に言えば、経済効率の向上と公平性の確保のどちらかを重視するか、が一つの基準である。小泉首相は「有能な人、頑張る人が報われるような社会がよい」と述べた。このような人にどの程度報いたらよいのか、人によって意見は異なるが、この言に原則賛成である。その理由を知るには、この原理を貫徹しているアメリカ社会を考えればわかりやすい。

'06.5.1.朝日新聞  京都大学教授・橘木俊詔氏

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