散歩道<882>
世界の窓・日韓国民レベルの連帯を(2) (1)〜(2)へ続く
北朝鮮と並んで、中国との関係も日韓関係に微妙な影を落としている。近年、日本と違い、中国脅威論よりもむしろ中国への親近感が韓国国民を捕らえている。しかもその過程に置いて中国と韓国の指導者層の中に、日本軍国主義や植民地主義の被害者としての意識を共有し、加害者の韓国・中国という「連帯」意識をもつ人々が少なくない。こうした意識が近年韓国の政界や知識層に強くなっているのは、386世代のいわゆる「犠牲者」心理と関連している。反体制、反権力を貫いてきた多くの386世代の運動家たちにとって、中国はいまだ過去の「犠牲者」の陰を背負っている。しかし、その陰を背負いながらも強大国化している。韓国も過去の「犠牲者」の陰を持ちながら、今や経済大国化している。かっての反体制の苦渋を舐めながらいまや権力に近づいた386世代にとって、自分自身と中国、そして自らの国とは同心円とまではいかなくても重なりあって見えても不思議はない。ここに、日韓の認識ギャップの第二の底流がある。このように、北朝鮮と中国を巡る要因が現代の日韓の認識ギャップの底流にあるということは、当然米国という要因もそこに絡んでいることを暗示する。386世代は反米でないにしても、米国に反発しがちだといわれる。その裏には、韓国のかっての軍事政権が米国との同盟強化を政権の正当性の一つにしていたことに対する反発もあるだろう。しかし、ここにもう一つの歴史的ひずみがあることに注意しよう。それは韓国の民主化運動に対する米国(そして日本)の民主勢力の支持の歴史が、必ずしも十分今の韓国民に知らされていないことである。韓国と日本と米国は、実は国家レベルの戦略的利害だけでなく、国民レベルでの民主化運動の連帯で結ばれていたという歴史的事実に我々は改めて眼を向けねばならない。そうしてこそ、初めて日本国民と韓国民との間の真の連帯感が生まれるのであり、06年は、その意味での「連帯年」であるべきだろう。
'06.1.18.朝日新聞・国際交流基金理事長・小倉和夫様
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