散歩道<748>
散歩道・面白い話大集合(292)・1481
論壇時評・観光客と留学生(3)・「安くておいしい国」の限界
1480 いま日本では年30万人、週に6千人の人口が減っている。17年末の在留外国人は前年末から7%増えたが、外国人の労働者で就労ビザを持つ人は18%。残りは技能実習生、留学生、日系人などだ。受け入れ型が不透明なので、労災隠しなどの人権侵害も数多い。こうした外国人が、コンビニや配送、建設、農業など、低賃金で日本人が働きたがらない業種を支えている。
いま政府は、産業の夭逝に応じ、実習生の滞在期間を延長したうえ、留学生の就労時間延長も検討している。その一方、政府が促進してきた「高度人材」の誘致は停滞したままだ。アジアの経済成長にともない、実習生の募集は年々厳しくなっている。外国人で低賃金部門の人手不足を補う政策は、人権軽視であるだけでなく、早晩限界が来るだろう。
外国人の在り方は、日本社会の鏡である。外国人観光客が喜ぶ「安くておいしい日本」は、労働者には過酷な国だ。そしてその底辺は、外国人によって支えられているのである。
1481 私は、もう「安くておいしい日本」はやめるべきだと思う。客数ばかり増やすより、良いサービスには適正な価格を付けた方が、観光業はもっと成長できる。ぎゅうどんも千円で売り、最低賃金は自給1500円以上にするべきだ。「そんな高い賃金を払ったら日本の農業や物流や介護がつぶれる」というなら、、国民合意で税金から価格補助するか、消費者にそれなりの対価を払ってもらうべきだ。そうしないと、低賃金の長時間労働で、「安くて良質な」サービスを提供させるブラック企業の問題も。外国人の人権侵害も解決しない。デフレからの脱却も出来ないし出世率も上がらないだろう。
日本の人々は、良いサービスを安く提供する労働に耐えながら、そのストレスを、安くてよいサービスを消費することで晴らしてきた。そんな生き方は、もう世界から取り残されている。<検>社説・論評、<検>世相、
’18.5.31.朝日新聞・歴史社会学者 小熊 英二氏
