散歩道<7014>                  

           日曜に想う・赤裸々な「私の」ディストピア(2)

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 「君が深淵を覗きこむとき、深淵もまた君を見ている」と19世紀のドイツの哲学者ニーチェは言ったそうだ。
 その言葉から発送して「あなたがスマホを見ている時、スマホも貴方を見ている」(プレジデント社)トイウタイトルのエッセイ集を出したのは芥川賞作家の藤原智美さんである。ネットは貴方のことを何もかも知っている。見られているのは貴方の方ですよ、と。

 その「見られている」ことを思い知らされるニュースが、先日流れた。

 就職情報サイトの大手運営会社が、学生の閲覧履歴などを人口知能
(AI)で分析し、採用内定を辞退する確率を予測して企業に売っていた。買い手となった各企業に対し、その企業を志望した学生個々の辞退確立を提供していたというから、不審を呼ぶのはもっともだ。
 400万~500万円で、38社が買っていたという。モラルを」問われるビジネスだが、個人情報による錬金術という時代の潮流の、ほんの一角なのだろう。バックダイナ金を生む個人情報は、いまや宝の山とも夢の資源とも言われている。
 「いいね!」をクリックし、様々なアプリを使い、検索し、閲覧し、買い物もする。こうやって私たちは日々せっせと」個人情報を検叙位している。欲望、悩み、好悪、位置情報、・・・あらゆるデータが集められ、分析されて、無意識な部分まで赤裸々な、私も知らない「私」が電脳空間にたちあらわれる。怖い話である。<検>IT

 ’19.8.25.朝日新聞・編集委員・福島 伸二氏