散歩道<6829>
日曜に想う・「上からの弾圧」よりこわいのは(4)
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「不忘の碑」の隣には「檻の俳句館」という小さな建物があった。事件で検挙された白泉ら俳人の似顔絵や作品を壁に展示し、一人ずつ鉄格子を取り付けて表現や言論への弾圧を「忘れまい」と」訴える趣向になっている。
<ナチの書のみ堆(うずたか)しドイツ語かなしむ>は」時局に便乗した当時の書店の光景であろう。今のヘイト本を想像させる.句は一本の鞭(むち)のように、作者の古家かや夫と檻の中からこちらを見つめている。
館主のマブシオン青眼さん(50)はフランス出身の俳人で長野市に住む。兜太さんを師とあおぎ碑の建立に尽力した。その人の言葉にははっとさせられられる。「上からの弾圧ではない。下からの弾圧がこわい。まわりの目が気になって、怖くなって、自分の自由を自分で諦める。自分で自分の檻を作るっている」
大げさな話ではない。職場や地域など日常の中での「空気」の圧力はだれにも経験のある事だろう。政治色を嗅ぎとられる意見や表現は、近年とみに息苦しさが増している。メディアもまた自己規制という「檻」を内部にかかえている。
碑も館も、ささやかな存在だ。しかし訪ねてみると、それらの句が過去のものではなく、いまという時代と深く切り結ぶんでいることに気づかされる。油断してはならない、という声を遠くから聞く。<検>戦争、
'2019.1.6.朝日新聞・編集委員・福島 伸二氏
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