散歩道<6519>

                              耕論・バック・トゥ・近代?(3)・ 自由貿易へ揺り戻し来る

  歴史を振り返れば、自由貿易から背を向けた国で経済がうまくいったところは一つもない。30年代には英仏のブロック経済化で欧州のGDPが急減し、ナチスが台頭しました。50~60年代にはインドやフイリッピン、アルゼンチンなどが保護主義をとりましたが経済は成長しませんでした。
 トランプ氏を、関税の大幅引き上げで国内産業の保護を優先させたフーバー大統領になぞらえる声もありますが、私にはニクソン大統領と重なるように見えます。71年に金とドルの交換を停止し、すべての輸入材に10%の輸入課徴金をかけた経済政策は「ニクソン・ショック」と呼ばれました。世界経済に混乱をもたらしましたが、結果的には時代の転換点となりました。
 保護主義的政策は結局はうまくいかず、揺り戻しが来る。だから、米中貿易戦争がエスカレートしても、自由貿易体制が終わることはありえません。ただ、世界の新たな経済秩序づくりの契機になる可能性はある。「雨降って地固まる」になればいいと思います。
<検>政治

'18.7.11.朝日新聞   学習院大学教授・伊藤元重さん 

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