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                            よみがえれ、川ガキ(1)

 この60年ふと気がつくと、いろんなものが消えていた。「川ガキ」もその一つ。川で遊ぶ子供を、そう呼ぶ。戦後、国内の川に1600を越えるダムが築かれ、清流が失われるのと呼応するように姿をけした。そんな川ガキをよみがえらせる「川の学校」が、徳島県の吉野川で始まって5年目になる。魚を突き、料理し、岩から飛び込む。「親を近づけない」「川で遊ぶ」以外にルールはない。年に2週間を河原で過ごす。これまでに120人の小中学生が「卒業」した。国内外の川をカヌーで下ってきた川遊作家野田知佑さんが校長だ。川が守られているか、自然の状態を見極められる子供をそだてる試みでもある。川は、水循環と物質循環の重要な担い手である。いわば国土の血管ともいえる。ダムによる分断で、森の栄養分は海へ届かず、海岸線の侵食も進んだ。魚は遡上
(そじょう)を阻まれ、生き物が行き来する動脈が絶たれた。血管が詰まれば、海も森も疲弊してしまう。清流を奪ったダムは、一方で電力や飲料水を供給し、洪水を調節し、経済成長を支えてきたのも事実だ。水没地住民の移転や生態系の破壊と引き換えに、下流の住民は安心と便利さを手に入れた。だが、国内ではさらに200を越えるダム計画が進む。利根川一つをとってみても、国土交通省の治水計画では今後20基近くのダムが必要になる計算だ。これ以上ダムが必要なのか。自然と折り合いを考えるときである。熊本県坂本村は球磨川沿いにある。02年、この村の県営ダムの撤去が決まった。貯水容量は1千万トン。50年間、発電ダムとして機能してきたが、老骨化が進んだ。ダム撤去は日本でははじめての試みという。5年後の着手が目標だ。2005年10月1日   '05.8.13.朝日新聞

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