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衆議院選の結果を見て(上)・(1)・谷藤悦史氏・前面に出た首相の「私」・「熟慮の政治」抑制懸念
小泉政治劇は首相が意図したとおりの結末になった。参議院での郵政民営化法案の否決から即座に行なわれた解散、総選挙は郵政民営化の賛否を問うものとの位置ずけ、その構図を際立たせる人の配置、郵政民営化が望ましいと流れを作り上げて選挙を確保した。見事というほかない。政党候補者政策を商品のように売り込む為の選略を整理体系化し、理論化したものを「政治マーケッティング」と言う。その理論は語る。人々の支持を調達するために、メディアを巧みに利用せよと、様々な問題を限られた時間で報道するメディアの為に、複雑な政治を可能な限り単純化して提示せよとそれには自らの立場を際立たせる為に対抗勢力を明示して対比せよと、さらに対比した勢力をひとくくりにして「望ましくないもの」自らは「望ましいもの」と二元化し、それを象徴する人々を配置せよと。ワンフレーズ・ポリティックス、郵政民営化に賛成か反対かの対比化、賛成は「改革派」で「望ましいもの」、反対は「守旧派」で「望ましくないもの」、の二元化、「刺客」の配置。「政治マーケッティング」の戦略を忠実に反映したような選挙であった。この単純化された構図にメディァが注目し、政治劇が増幅された。この政治劇に、野党は翻弄されて選挙戦を終えてしまった。欧州諸国では選挙戦は4~5週間に渡って行なわれるが、この選挙は12日間。この選挙期間では、ひとたび「世論」の流れが作リ出されると、それを変えることは難しい。メディァも、小泉政治に対抗する政治議題を設定できなかった。テレビを中心としたメディァの論理を理解し、巧みに利用した小泉政治の勝利である。日本におけるメディァ利用は、佐藤政権の頃から進められ、田中、中曽根、細川と徐々に洗練度を増していった。小泉首相のメディァ利用もその延長線上にあり、とりわけ特異な現象ではない。しかし、小泉首相は、最も自覚的にメディァ利用を進めた首相だろう。自民党内部に強力な支持基盤を持たない首相にとって、「世論」は自らの権力を支える必須の資源であり、「世論」の支持の調達の為にメディァ利用は必然でもある。政治の様相が政治のメディァ利用と共に大きく変わった部分がある。2005年9月14日
<検>政治
'05.9.12.朝日新聞,早稲田大学教授・谷藤悦史氏