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                            深刻さ増す日本の貧困(3)  (1)~(3)続く

 以上が日本の貧困率の高いことを現象面から説明するものであるが、もろもろの制度がこれを後押ししていることを述べよう。最低賃金制である。本来すべて労働者に生きていけるだけの賃金額を保証するのがこの制度の趣旨であるが、日本ではこの最低賃金額が他の先進国に比し低い、しかも驚くべきことに生活保護支給額よりも低い。最低賃金あたりの労働者は、主として若者と既婚女性が中心なので、親や夫の経済支援があるので低賃金でも生活苦にならない、という考慮が日本にあったからである。社会全体の雰囲気として高い最低賃金は企業経営者を苦しめるので避けた方がよいとの配慮もあった。最低賃金の上昇は雇用の削減につながるとの反対論も強い、しかし、月額10万円を少し超える最低賃金であれば、1人で暮らしていけない。このまま放置してよいか再考を要する。2、生活保護制度がうまく機能していない。わが国では資産調査が厳しいこと、貧困者に恥の感情もあって支給されるべき人に支給されていない、事実がある。もとより貧困線をどこに設定するかは慎重になされねばならないし、働ける人にはできるだけ働けるように政策との兼ね合いも重要であるが、生活保護制度は抜本的な改革を必要とする。日本の貧困率は想像を越えて深刻さを増している。一見豊かさを成就したわが国だが、新しい姿で出現している貧困を解明し、かつ撲滅を図る政策の必要性は高まっている。

'05.8.1.朝日新聞、橘木俊昭京大教授


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