散歩道<5552>
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ゲームソフト・有害図書指定の輪を全国に
神奈川県では児童福祉審議会の答申を受け、本年6月7日、全国に先駆けて米国製家庭用ゲ-ムソフト「グランド・セフト・オート3」を残虐なゲームソフトとして有害図書に指定した。県青少年保護育成条例に基ずく処置だ。これにより県内では18歳未満への販売やレンタルが禁止された。販売店などは陳列も区分して、容易に監視できる店内に置くことが義務ずけられることとなった。本件の同趣旨の条例は、ほとんどの都道府県で制定されている。青少年の性的感情を著しく刺激するものと、粗暴性または残虐性を甚だしく誘発・助成するものを有害図書に指定することが出来ることになっており、この図書類にはゲームソフトも含まれる。しかし、ゲームは雑誌などと異なり、誰もが直接内容を視認出来るわけではなく、操作によって有害な場面が現れるという特徴があるため、指定が難しいという課題があった。さらに、わいせつ性の高いものは、具体的な基準を定めて、雑誌などを有害図書に指定しているが、「粗暴性または残虐性」については、それを判定する基準の設定が難しい。そのため、ゲームソフトにも残虐で青少年に有害なものがある」との指摘を受けながらも、有害図書への指定は進まなかった。ゲームを有害図書に指定した、この先駆的な取り組みは、大きな反響を呼び、多くの意見がよせられた。「憲法で保障された表現の自由を侵害する」「大量に出回るゲームソフトの中で一本だけ指定しても効果はない」「青少年の影響が客観的に証明されていない」など、その大半は批判的なものだ。青少年の健全育成のために、はんらんする情報をどのように扱ったらよいのか。奥深い課題であり、これを機会に大いに議論し、対策を考えるべきである。ゲームソフは02年には年間1千種類以上製作され、6600万本も出荷されているという。しかし、保護者の方々は、お子さんがどのようなゲームをやっているのか、ご存じだろうか。今回本県が指定したゲームは、主人公が、棒で標的である人間を殴り続ける場面、一般市民を自動車で跳ね飛ばす場面、頭部を銃で吹き飛ばされた通行人の傷口から血が噴出す場面などの描写が続く。しかもこのプレーヤの主人公はプレーヤ自身である。つまり、たとえ仮想空間だとはいえ、ゲームを操作する青少年が、こうした殺傷に主体的にかかわるのだ。精巧な技術開発によりリアリティーが増した画面に向かい、プレーヤが一人で仮想経験を繰り返す。こうした体験を続けることが、青少年にどのような影響をあたえるのか。私は、ゲームソフトには、自らが操作するという特徴があるが故に、雑誌やビデオに比べ青少年への心理的影響はかえって深刻であり、対策は急を要すると考える。青少年の健全育成に向けた取り組みは、社会全体の責務である。保護者の方々は、これを機会にゲームソフトに対する関心を高めていただきたい。ゲームソフト関係業界には、今回の指定を契機に、自主規制の動きもでてきたが、社会的責務として、さらなる実効ある取り組みを求めたい。今回の指定の効果は現状では県内にしか及ばない。そのため、先日、全国知事会の機会をとらえて、各都道府県に有害図書への共通指定を検討するようお願いした。将来を担う子供達の健全な育成のため、有害なゲームソフトの規制について、国民的議論を展開し、社会全体で取り組んでいかなければならない。 2012年7月11日
'05.8.3.朝日新聞・松沢成文神奈川県知事
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