散歩道<5196>
仕事力・人生を懸けて追いかける(4) (1)〜(4)続く
忘れ去られてはならない
自分を緩めはじめたら人間はいくらでも緩む
音楽に限りはありませんが、仕事をする以上は時間を本当に大切にして。真剣に取り組むほかありません。その積み重ねの毎日が、仕事というものだと思います。そしてわずかづつでも自分を高めていかなくてはならない。1度でもこれくらいでいいと気持ちを緩めてしまったら、それを締め直すのは想像以上に大変なことです。
仕事を続けている限り、自分の問題に毎日向かいあうことになります。目標を持っていても、それがいつ叶うか分からないし、周囲の人には一層判断ができないでしょう。それでも自分と一生懸命に向き合うしかない。そうやっているうちに見えてくるものがたくさんあると思います。
実は私も一度怪我をして演奏会ができなくなるという経験をしました。いま振り返ってみれば、その頃自分があまりにも突き進みすぎて思考力を失い。もう1人の自分が無意識にその状態を壊そうとしたのかもしれません。大したけがではありませんでしたが、4ヶ月ほどステージを離れなければなりませんでした。やむおう得ない状態だから、この時間を生かしてビジネススクールいってみようかとも思ったのですが、いくら時間はあっても結局やる気が起きないのです。
そして自分を冷静に見つめ「私にできることはバイオリンしかないし、音楽以外はいらないのだ」と改めて気づくことになりました。人生の試練は、やはり自分に返ってくるものです。
そしてひとから学ぶ
「この方は素晴らしい」と、私は人から影響を受けることが少なくありません。音楽での学びはほとんどマンツーマンで、人から教えられたことを吸収していくことで自分を磨いていきますが、さらに、音楽分野以外の方にお会いして、考え方や人間性から受ける影響も非常に大きいのです。それがいい意味で表現にも反映していくのだと思います。例えば、旧ソ連の最高指導者であったゴルバチョフさんにお目にかかったときに、ご自分の信念に向って歩いていらっしゃる強い姿が、とても印象に残っています。私には勿論政治的な判断はできませんが、信じることに向う気持ちが湧き上がり、周りの人たちを圧倒していました。建築家の*1安藤忠雄さんの想像する過程にもすさまじいものを感じます。私たち演奏家は創造する仕事ではなく、楽譜というルールがありますが、それでも、素晴らしい方々のあふれるほどの信念や情熱に突き動かされて、自分自身に「真剣であるか」と問い続けることを学びます。
仕事は真剣であればあるほど、自分に返ってくる影響が大きく、人間としての成長を助けてくれるものではないでしょうか。私には何ができるか。私はどんなことをするべきか。仕事の中で悩みながら、人生をかけてそれを見つけていく日々を私は選びます。ここで終わりにしたくない。
自分にできることを追いかける。それが仕事の真髄かもしれません。
'13.3.10〜 3.31.朝日新聞・バイオニスト・諏訪内 晶子
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