散歩道<5172>
コーチよ怒鳴るな(5) (1)〜(6)続く
勝つのは大切だが 目的は自由の獲得 武道精神と訣別を
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・・・コーチの中には「愛のムチ」は必要だという人もいます。
「そんな話を聞くたびに、しつけとスポーツを混同した議論だと、うんざりします。
『まじめに練習しろ』と怒って殴るのは、生活態度のしつけであってスポーツとは何の関係もない。しかも、しつけなら指導する側に教育者としての冷静さが求められるはずですが、何十発も殴るコーチは興奮状態でしょう。大人の育ちがおさないですね」
・・・日本のスポーツの世界では、どうしてこんなに精神論が幅をきかせているのでしょう。
「明治以降、欧米から入ってきたスポーツは、日本では武道の精神と合体しました。だから礼儀作法や忍耐力といった精神論が出てくる。『ゲーム』という英語が『試合』と<検>訳されたのも象徴的です。真剣勝負という武道色が強まり、逆にゲームが持つ開放的なお祭りの雰囲気が薄まりました。その結果、勝って1番になることが大事だという勝利至上主義も生まれたのです」
「野球でよく見られる『グラウンドに礼!』もそうです。いくら礼をしても、グランドは挨拶を返してくれませんよ。『さあ、きれいに整備して帰ろう』でいいじゃありませんか。しつけとも、武道や精神論とも切り離した新しいスポーツ文化を築きたいものです」
・・・ただ、勝とうと頑張ることで学ぶことも多いのでは。
「その通りです。でも、それは1番でなければならない、という話ではない。日本では少年サッカーの全国大会がありますね。しかも総当り戦ではなく勝ち上がりのトーナメントで、私は少なくとも小学生の間は、全国ナンバー1を決める意味はないと考えています。むしろ弊害の方が大きい。1番になるため、選手がほかの可能性を犠牲にしてでも強くなろうとするからです。欧州や南米ではこんな大会はありません」
「ただ最近、『楽しめばいい』『勝たなくてもいいよ』という人も出てきました。これは、違うと思う。目の前の試合に全力を傾けて勝つというのがスポーツの本質なのですから」
'13.2.1.朝日新聞 サッカーの出前指導をする 池上 正さん
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