散歩道<5158>
                  インタビユー・オピニオン・科学者が信頼されない国(5)                      (1)〜(6)続く

                    学と社会つなぐ仕組みと意識必要 市民と議論しよう

■  ■

・・・それにしても、科学技術創造立国を合言葉に、日本は科学には力を入れてきたのではないですか。
  「1995年に超党派で科学技術基本法が成立し、私自身それに基づく科学技術基本計画つくりに携わってきました。競争的資金を倍増させて研究の活性化を狙ったのですが、研究体制や研究者の評価法、省庁や組織の縦割りなどは古いままで、効果が上がらない。燃費の悪い中古車に燃料だけ大量に投入したのと同じようなものです。人材の流動性が高く評価の仕組みもしっかりしている米国との差を十分考慮せず、やり方をまねしたためです」
  「2001年の中央省庁の行政改革で科学技術政策の司令塔として内閣府に総合科学技術会議ができました。国家権力の中枢に科学技術という価値観の違うものが入り、双方の理解がなかなか進まない。現場でそれを痛感しました。科学技術政策を、経済、エネルギー、環境、医療や外交などほかの国家政策とどうつなぐか。そこが不十分なまま、いわば『科学技術村』のための振興策になっていきました。その結果、政治のリーダーからの関心は薄れ、研究者には研究し、論文を書いていればいい、という考えを助長してしまいました。行政の一員として大いに反省しています」
・・・・市民の側はどうでしょう。
  「3・11後、多くの市民の声が寄せられました。その中に、科学への興味をなくし、科学者だけに任せていた社会にも問題がある、という声がありました。昨年の科学技術白書によれば、3・11以後、市民は科学技術の方向について科学者だけで決めることに不安を感じています。市民も自分の問題として考え、議論に参加することが求められています。率直な議論ができるような環境が必要です。科学者は市民の不安を重く受け止め、限界も含めて科学について社会に伝えていく。社会的な問題に対して積極的に助言するそうした活動を通じて、信頼を少しずつ取り戻していくべきです」


'13.1.24.朝日新聞・政策研究大学院大学教授・有本建男さん

関連記事:散歩道<検>科学、<検>政治、<検>社説、