散歩道<5020>
                            経済気象台(737)破壊的イノベーション
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 米国の著名な経営学者クレイン・クリステンセン氏は、イノベーション(革新)には2種類あると言っている。一つは通常の持続的なもので、もう一つはこれまでの産業を覆すような破壊的イノベーションが頻発する。これが経済成長の源泉である。人は習性として変化を嫌うものだ。わが国では、変化を嫌悪する組織の力が強烈な為に、破壊型のイノベーションが抑圧されてきた。
 一例が、原発事故で明らかになった政・官・学の原子力村である。総括原価方式という都合のよい制度に安住し、技術的に困難な核燃料サイクル事業を続けてきた。一方で新エネルギーには投資を惜しみ、実質的に阻止してきた。
 医薬品販売業界も同じように見える。今春、東京高裁は薬のネット販売を認めたが、対面販売に固守する構成労働者は上告し、流通イノベーションはまたもや阻止されルことになった。

 ウィンーというファイル交換ソフトの開発者が著作権法違反の法所
(ほうじょ)容疑で逮捕され、7年にわたる裁判の結果、昨年暮れに無罪となった。その間、米国で同種のソフト開発が進み、音楽鑑賞の仕方が激変した。
 これらは、既得権を持つ業界の無言・有言の圧力に、秩序維持を目的とした法執行機関が敏感に反応し、社会の進歩を阻止してしまう証左の1部である。
 経済発展の原動力がイノベーション、とりわけ破壊型にあることを、政治家や官僚は理解したがらない。そのような人たちが今、「税と社会保障の一体改革」という分配論議に熱中している。この結果、この国の衰退はますます加速する。
12.6.14..朝日新聞

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備考:組織の中にいると、言葉からして、「破壊的イノベーション」という状況は少し抵抗があるのかもしれない。