散歩道<4458>
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異なる意見集め磨く信頼性(3) (1)〜(3)続く
政府の場合には審議会など専門的助言組織において、意見や専門分野、社会的立場の異なる専門家をバランスよく集め、専門知のポートフォリオを組成することが重要だ。ちなみに全米科学アカデミーでは「偏りのない専門家などいない」ことを前提に個々の専門家の中立性を求めるのではなく、様々なバイアスのある人を集め、審議会全体としてバランスを取るようにしているという。
そういた政府のポートフォリオが有効に機能するためにも重要なのは、社会全体としてのポートフォリオを組成することだ。一つの政府の助言組織の審議過程とそこで利用される資料・データーを広く社会に公開し、政府外部の多様な専門家(関連する知識がある職業人・生活者も含む)の知見や意見を集約し、専門家同志の相互批判を通じて、より信頼できる知見を引き出す工夫が必要だ。
NPOなど、市民の不安や期待に寄り添いながら活動する市民社会組織の専門的な調査・分析・政策提言の力を高めることも不可欠だろう。そうした「対抗的専門性」を、寄付などを通じて、われわれ市民自身が育て鍛え上げるとともに、政府・自治体なども、時に対立し時に協働する好敵手として、NPOなどの調査分析活動や、それをサポートする大学などの研究者との協働を支援していくことが重要だ。
そうやって社会全体で知のポートフォリオを豊かにすることは、今の危機に間に合わずとも、今後の原子力やエネルギー政策を考えるうえでますます重要になるに違いない。
'11.6.30.朝日新聞・大阪大学准教授・平川 秀幸氏
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