散歩道<4359>
                        
                        オピニオン・インタビユー・原発事故の正体
  
                    限界のないリスク 近代社会が生んだ不確実性の象徴(1)                  (1)〜(6)続く

どうやら私たちは途方もないリスクの下で暮らしているらしい。被害がいつまで、どこまで広がるか分からない福島第一原発の事故は日常に潜むそんな不気味さを意識させた。この正体は何だろう。1986年のチエノブイリ事故の前すでに、今日の世界を「リスク社会」と喝破していたドイツの社会学者ウイルリッヒ・ベック氏に聞いた。

・・・・今日の世界にとって福島の事故はどんな意味を持つのでしょう。
 「あのような大災害が起きたときに、私たち人間には何の備えも出来ていない、ということです」
・・・・あのような、とは?
 「人間自身が作り出し、その被害の広がりに社会的、地理的、時間的に限界がない大災害です。通常の事故は、例えば交通事故であれ、あるいはもっと深刻で数千人がなくなるような場合であれ、被害は一定の場所、一定の時間、一定の社会グループに限定されます。しかし、原発事故はそうではない。新しいタイプのリスクです」
 「そんな限界のないリスクをはらんでいるのは、原子力だけではありません。気候変動やグローバル化した金融市場、テロリズムなどほかの多くの問題も同じような性格を持つ。近代社会はこうしたリスクにますますさらされるようになってしまいました。福島の事故は、近代社会がかかえるリスクの象徴的な事例なのです」

'11.5.13.朝日新聞・社会学者・ウイルリッヒ・ベックさん

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