散歩道<4282>

                        経済気象台(653)復興への主軸

 東日本大震災で復旧が成り立たないほど根こそぎの打撃を受けたところも少なくはない。発想を改め、本来なら何が願われるのか、という観点から思い切った「復興」とする必要がある。震災の影響は全国に及んでおり、日本全体の復興の転機とすることも必要とろう。
 その主軸となるのは、東北の被災者の方々が見せてくれた忍耐心や絆の強さ、人を思いやる優しさや誠実さ、またこれほどの試練を冷静に受け止め、助け合い、復興への意志を持ち続ける粘り強さである。それは海外の人々が驚嘆し、尊敬するのを見て改めて気づく、日本人本来の心組みでもある。利己主義や今さえ良ければよいという刹那主義に染まり、陰を潜めていたこの資質が大試練で覚醒し光を放っている。
 グランドデザインといえば、目に見える形やシステムと考えやすいが、現実を作るのは人間の心である。その心をもっと深いところで突き動かす一人ひとりの志や願いがもたらす力こそ復興の真の柱だと思われる。
 元々誰にも備わっている「仏性」を呼び起こすことによって、試練に立ち向かう力や英知は2倍、3倍にもなるからだ。
 これまでのような努力だけでは超えられない試練だからこそ、そこに焦点を合わせる必然がある。
 いま一つの柱は、この機会に東京への一極集中を見直し、それぞれの地域の個性を生かした、災害にも強い経済、社会の構造をめぐらすことだろう。危機管理の観点から近畿圏に東京圏に匹敵する中核機能を持たせることがは、企業の段階でも始まりつつある。そうした複眼構造の持つ効用は、変化に強く柔軟な生態をもたらし、人の育みにも有効だと思われる。


'11.4.5.朝日新聞

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