散歩道<4267> 

                                  オピニオン歴史のいま
                        3・11に砕かれた近代の成長信仰 もやっとした不安(2)  

 近代とは、経済成長を前提にした時代です。社会の土台に「成長はいいこと」「ゼロ成長なんてとんでもない」という発想がある。私は「成長パラノイア」と呼んでいます。どうやら経済成長できるか。人々はこれを追い求め、国家が後押しし、学者が研究してきました。
 この成長を裏打ちしたのが、地理的な拡大と科学技術の発展でした。
 15世紀以降、西ヨーロッパの国々は食料や資源、労働力を求めて、世界のすみずみにまで出かけていきました。しかし地球には限りがあります。やがて成長は壁にぶつかりそうになりました。
 それを突破してきたのが科学技術の発展でした。農業の生産性を向上させたのも科学技術。エネルギーの問題を「解決」してきたのも科学技術です。石炭から石油、そして原子力へ。科学技術は経済成長を裏打ちする「魔法の杖」でした。自然の脅威から我々の生命や財産を守ってくれるのも科学技術でした。
 ところが今回、それがいっぺんに揺らいでしまいました。日本は世界的に見て、もっとも科学技術が進んだ国です。その日本さえ、巨大な津波に負けてしまったのです。そして科学技術が生んだ原子力発電所が厄災を生み出し続けています。

'11.4.1.歴史家、大阪大名誉教授・川北稔さん

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