散歩道<4246> 
  

                               
災害・ 国の対応注視を                     1)〜(2)続く
                               想像することでつながる(2)
       

 こんな時、寅さんなら何と言うだろう、どう行動するだろう・・・・と考えます。
 阪神大震災の後、神戸市の長田地区で映画を撮りました。焼け出された人たちから「寅さんにきてほしい」という声があがったのです。
 僕は、あんな無責任な男の映画を被災地で摂るなんて、とんでもないことだと思い、最初はお断りしました。
 でも、訪ねてくれた長田の人たちが、口々に、こうおっしゃるのです。
 「私たちがいまほしいのは、同情ではない。頑張れという応援でも、しっかりしろという叱咤
(しった)でもありません。そばにいて一緒に泣いてくれる、そして時々面白いことを言って笑わせてくれる、そういう人です。だから寅さんにきてほしいのです」
 寅さんのような男が、そばにいることが何かの慰めになるのならば。そう考え直して、撮影に向いました。
 あの焼け跡であった出来事を思うと、撮影していて、僕等はとても辛かった。でも、長田の人たちはとても温かかった。ここで助け合い、支えあって生き抜いてきた人たちです。
 被災地とは全く比較にならない苦労ですが、関東地方ではいま停電が起き、通勤電車には長蛇の列ができています。大勢の人が、愚痴も文句も胸に納めて、整然と黙々と行動しています。遠くで厳しい現実に耐えているたくさんの人たちのことが、頭の中にあるからではないでしょうか。
 貧弱な想像力を懸命に働かせて、被災地の人たちを思い続けたい。そうすることでつながっていたい。今はただ、そう思っています。

'11.3.19.朝日新聞・映画監督*1山田 洋次さん

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