散歩道<4219>
オピニオン・3・11
すべてが後手後手に回る(2) (1)〜(2)続く
弁を開いて、多少の放射性物質を含む蒸気を放出したことは、容器が完全に壊れてしまうことを防ぐためにはやむおうえない。問題は、放射性物質を閉じ込める圧力容器と格納容器がどうなっているかだ。周囲の放射線量だけでは判断できないとはいえ、明らかに閉じ込め機能が瞬間的には危うくなっているといえる。2号機の圧力抑制室が破損した可能性があるという発表があったが、おそらくそこからもれているのではないか。容器が壊れ、内部の物質が大量に出てくるところまではいっていないようだが、非常に深刻な状況だ。
私は、1998年に茨城県東海村で起きた核燃料加工会社ジェー・シ・オー(JCO)の臨海事故の際に 、原子力安全委員会の委員長代理として、現場で臨界を止める作業にあたった。その時と比較して、唯一評価できるのは官邸の対応だ。首相や官房長官が積極的に前に出ているのは評価したい。
一方、原発を監督する立場にある原子力安全・保安院は、十分に機能していないように見える。私は、原子力を規制する保安院が、推進する立場の経済産業省の傘下にあることが問題だとかねて主張してきた。その弊害が、今回も出てしまったように思えてならない。
JCO事故の時は、多くの研究機関がデータ収集で協力してくれ、各電力会社も放射能を測定するモニタリングカを派遣してくれた。原子力関係者が総力をあげて助言やバックアップしてくれたおかげで、危機を乗越えることができた。
今回は東京電力と保安院がすべて抱えこんでしまっているために、残念ながらそうしたバックアップがほとんど活用されていないようにみえる。原子力安全委員会などの協力も得て対処すべきだったのに、自分たちだけでやろうとした。そのやり方が適切だったのか。東電の危機管理体制の弱体ぶりと同時に、日本の原子力安全行政の制度的欠陥という、一番心配していたことが露呈してしまった。
'11.3.16.朝日新聞 大阪大名誉教授・住田 健二氏
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