散歩道<4142>                           自分流に纏めた           
                       仕事力道具は走りながら拾う(4)   人間は、人のために奮起する   (1)〜(4)続く
                             

個人の野心では働く気持ちが続かない   
 日本人で、人生に悩んで自殺する人が多いのはなぜか。やはり人間は1人では生きていけないからだと思います。孤立したと感じた時に絶望感がやってくる。家族が食べていく為に、嫌な仕事でも自分が頑張らなくてはならないと思えば、生きる力がわいてきます。アフガニスタンで、私や職員、現地の人々が井戸を掘ったり、水路を作る灌漑事業の辛い労働に一生懸命なのは、これでムラ全体はが豊かになるとか、家族を養えるということが非常に励みになるからです。いまや、私たち医療NGOというよりも、1千人以上の職員や労働者を抱える土木公団の様相を呈しています。そのなかで日本からアフガニスタンにやってくる多くの若者を見ていると、日本社会では何か満たされない心の飢えを抱え、生き方に行詰まりを感じてここにいると痛感することがあります。個人競争とデジタル主流になりつつある日本からのがれて、泥にまみれる土木仕事を何年もつづけていく。時を経て、別人のように生き生きと働く姿を見ると、誰かのために自分の力を使うことが人間の生きがいの原点だと思わざるを得ない。人が喜んでくれるから働いてるけれど、実はそれが自分の支えになっているのです。ただ近代的なヨーロッパ哲学が言う個人主義に突き進んでいくと、人の心には限界が来るのではないでしょうか。面倒くさいと振りきってきた「村の共同作業」も大切な働き方だと知る時です。

若気の至りを受け入れていこう
 若者を萎縮させているのは大人たちです。社会に出て仕事を始めるとすぐに、失敗をとがめるような忠告をし始めますが、人間は失敗しないと学んでいくことができない。その体験を大人はしてきたはずなのに、若者を追い込んでいる。中には暴走もあるかもしれませんが、ある程度許して自由度を保たないと萎縮した人間ばかりになります。そして、若い人自身も、未熟だから失敗するかも知れないという自分を許す気持ちになることです。海外医療協力をしたい、現地で働きたいという志は悪くありません、ただ、そのためにどこの学校を出て、こういうルートと、こういう経験を経てと石橋をたたいているうちに、頭の柔らかい年齢を過ぎてしまう人が本当に多い。現地に行ってから恥をかきたくないとか、すぐに役立つ存在になりたいという計画は分かりますが、行って見て足りないものがあれば、そこで工夫をすればいいのです。考えるより動いてしまうようなおっちょこちょいの方がいい。私は医者なのに土木工事で采配を振るい、川の中に入って重機の操縦をしている今が一番幸せです。土木工事の基礎知識はもちろん「にわか仕込み」で、冷や汗をかきながら修得したものですが、水があれば死ななくてすむ、難民化せずにすむという、現地の人々の熱意が私を支えてくれている。仕事は、人の思いとつながる中にあるものだと、若者に伝えたいと思います。
'11.1.9〜 1.30. 朝日新聞 医療NGOペシャワール会現地代表医師*1中村 哲さん

関連記事:散歩道<検>仕事人