散歩道<4131>
         
                       経済気象台(639)・日本再生への道

 年頭の新聞各紙の論調は日本の凋落(ちょうらく)の厳しさへの認識では共通していた。しかし、この暗転のスパイラルから脱却する処方箋はいま一つであった。それはこの危機を生み出した根本の原因が、私たちの意識(心)であることの認識が不十分なためではないか。
 試練にあっても、その原因を自分とは切り離して他人のせいにし、誰かが何とかしてくれると期待し、うまくゆかなければ不満となり、努力の限りを尽くすことはしない。よりよい未来のために、リスクを冒してでも挑戦することはせず、今の立場を守ろうとする。このような受け身の風土が日本全体を覆っている。
 政治にも国民が希望と誇りのもてるビジョンをたて、その実現のために必要な苦しみはともに背負うことを迫るようなたくましさはない。経営は本来の奉仕対象である顧客よりも株主の利益を優先する市場の目にとらわれ、視野は狭まりダイナミズムを失っている。
 そこには、試練によってこそ成長する人間のたくましさや、損得を越えて他に尽くすことから生まれる充実感や連帯感、創造力など、人間であるからこそ体験できるすばらしさの忘却がある。
 しかし、もうこの忘却の異常さに誰もが気付き始めている。その気付きの深さと転換への強い意志こそが日本を救う力だろう。
 同時に必要なのは、それを具体的に生きて多くの人に希望を呼び起こすモデルの輩出である。一人一人が持つ可能性を信じる新しい経営や医療や教育など、小さくとも本物であれば、きっと共鳴の輪は広がり、日本再生のムーブメントにつながる。なぜなら誰もが心の深いところで本当はそうしたいと願っているからである。

'11.1.7.朝日新聞

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