散歩道<4043>

                            ザ・コラム・遠野物語(4)                          (1)〜(4)続く
                            百年の知恵 町おこしに

○ 
 
 「急に鹿が増え、畑の害がひどくなった。大半の農家がネットで畑を囲い、その中で耕作している」。4期目の椎葉晃充村長はそう嘆く。
 東京都の4分の1の広さに、人口3千人。高校がなく、村を出た若者は戻らない。だが「ないもの尽くし」を強みに変える知恵は、まだ生きている。
 「村では、萱
(かや)ぶきや収穫、狩猟で助けあってきた。互いに支えあい、少人数だからこそできることに知恵をしぼりたい」
 村役場の職員はボランティアで、自宅近所のお年寄りの世話をする。今年は地デジ対策で、お年寄りら全戸を光ファイバーで結んだ。中学生は全員、修学旅行で、小国でも繁栄するシンガポールに行かせる。高校や大学を卒業後、村に戻れば奨学金を免除する制度も始めた。お年寄りと子どもを、真っ先に重んじる伝統に立った政策だ。
 私たちは、かっての「右肩上がり」の成長を望めないばかりか、グローバル化の中での人口減少という前例のない事態に直面している。100年前、伝承が消え行く前に柳田が記録した祖先の知恵を、もう一度学ぶ時期に来ているのかもしれない。

'10.11.17.朝日新聞・編集委員・*1外岡秀俊氏

関連記事:散歩道<1931>NHK・TV*2「どんと晴れ」<検>氏名・*1外岡秀俊氏3036.3618.3755.<検>社会の活性化