散歩道<3916>

                             社説・主権者教育(2)                    (1)〜(2) 続く      
                                
社会の仕組みを知ろう

  今年度は埋蔵金と呼ばれる政府の資金も使ったが、来年度からはどう財源を確保するか。大きな課題だ。だが、年間で約10兆円の税金が、年金に投じられていることは知る人は4割に満たない。そんな調査がある。年金は、若者の生活を守っている。保険料を払うか、所得が低い場合などは免税や猶予の手続きをしていれば、万が一、自己や病気で一定以上の障害を受けた場合、若者も月8万円あまりの年金を受け取れる。
 だが、保険料を滞納し、障害年金を受け取れない可能性がある人の半数近くはそれを知らないそうだ。
 学生の年金への加入が任意だった時代に、未加入で障害年金を受け取れなかった人たちは、長く苦しい裁判闘争を余儀なくされた。滞納したままの人も、そういう仕組みと経緯を知れば考え直すだろう。
 テレビ番組で、タレントが「消費税率25%のスウエーデンは19才まで医療が無料、5%の日本では生涯で2200万円かかる」とパネルを使って説明していた。日本の欄には「全額自己負担の場合」と注意書きがあった。だが、公的医療保険に加入していれば、少なくとも7割は保険で賄われる。全額、自分で払うことはあり得ない。窓口で払っているのは残りの3割だ。
 消費税の負担と社会保障サービスの関係を強調するのはよいが、日本では医療費を自己負担で賄っているという誤解を広げないか、心配になる。
 知識があれば、政策の選択肢が、自分にどう影響するかを想像する力ももてる。社会に出る前後、学校や職場で集中的に、制度の基本や使い方を教えられないか。それは政治に参加する力を養うことにもなる。国会の論戦が始まった。あらためて主権者としての知識を学ぶ教育の必要を考えたい。

'10.10.8.朝日新聞