散歩道<3873>

                       世相(177)・on reading本を開けば(2)           (1)〜(2)続く    
                           難しいことを易しく・・・

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 大衆小説は、新聞や雑誌い連載されるから、長いものが書ける作家でなければだめである。野村胡堂の「銭形平次捕物控」は、雑誌「オール読物」の創刊以来、20年以上かき続けられた。
 これは鶴見さんの60年前の論考で、その時点では、故人となった作家のものは売れないというのが大衆小説の常識だとあったが、いまや司馬遼太郎、松本清張らが亡くなっても売れているのは、例外と言えなくて、大佛次郎、吉川英治、藤沢周平ら、知識人、大衆の別なく読まれている作家も多い。
 大佛次郎『ドレフュス事件』は、いまは手に入りにくいという話だ。わたしは持っているが、書棚のどこかに隠れていて、数年に一度出会うだけである。
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 本ではないが山田洋次監督の「男はつらいよ」シリーズは、きっと鶴見さんも見ておられるだろうから、こんど話を聞いてみたい。
 サマセット・モームの短編集は、楽に読めるからおすすめである。モームなら、少し長いが、『人間の絆』は読み応えがある。これは、足に傷害がある少年が次第に画家への道を歩み、あとで挫折することになる話だが、この本が家の中でみつからぬとわたしは落ち着かなくなる。
 ところがモームは、大衆小説だとして、批評家の評判は低いのだという。わたしはそうかなと首を傾げるが、哲学者の田中美知太郎はモームの愛読者だと書いていた。そのためわたしは田中美知太郎を読んだが、果たせるかな、この方の本も難しくなかった。鶴見俊輔もそうである。
 「難しいことを易しく、易しいことをふかく、ふかいことを面白く」とは、井上ひさし
*2の残した名言であった。

'10.9.26.朝日新聞・画家  安野 光雅さん

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