散歩道<3833>

                      経済気象台(606)・過敏性円高恐怖症を排す

 1j=80円台半ばまで進んだ円高に対し、警戒感が強まっている。エコノミストや経営者は円高対策を求め、政府も景気刺激策の検討を始めた。しかし、いつものように、彼らの円高恐怖症はどこかで合理性を欠いている。
 第一に、円高の主な理由として、米国連邦準備制度理事会(FRB)が量的緩和を含む一段の金融緩和に踏み込む可能性と、それとは対照的に日銀が追加的金融緩和に慎重なことが挙げられている。しかし、長期金利の水準は米国の方がまだ十分高い(10年国債でみると、日本0.9%に対し米国2.6%)のだから、いま円を買うのは合理的ではない。円高が進んだのは、不安が急速に高まったからではないか。
 第二に、輸出が円高によって減速し、景気に悪影響を与えることが懸念されている。輸出が日本経済の回復を支えている実態をみれば、もっともな話だ。しかし、中国に人民元を切り上げて内需主導型経済への転換を進めよ、と言ってきたことを考えると、日本が円高懸念を声高に叫ぶのは、ご都合主義としか映らない。
 もし欧米経済が減速するならば、輸出に依存した日本経済に悪影響が及ぶという実態が認識される中で、円高はいずれ修正されることだろう。その間の一時的な円高の行き過ぎを防ぐのであれば、単独であっても政府・日銀が介入し、「為替レートの過度の不安定化を防ぐ」というメッセージを明確に示せばよい。一方で、円高の好影響を正しく認識することも必要だ。海外企業とのM&Aが促進され、製品輸入も増える。その結果、日本経済のグローバリゼーションも進む。それが、日本が進むべき道ではなかったのだろうか。

'10.8.28.朝日新聞