散歩道<3814>
経済気象台(604)・プラグマティズム再考
経済大国を誇る日本であるが、自らが発明した技術によってスタートし、成功した企業は甚だ少ない。
その双璧(そうへき)ともいえるのが、二股ソケットと地下足袋であろう。それぞれ、パナソニックとブリジストンという世界的企業へと成長した、いずれの技術もその独創性により、知的財産権を認められた。
現在、日本経済に最も大切なことは、新規事業の創造である。政治的にもそれは最優先課題で、新事業によって活力を生み出すことが次なる時代のためにも欠かせないものだ。それは、日本からのハード輸出に対して、ソフトを軸に新しいビジネスを打ち立てたシリコンバレーの例を見れば十分であろう。そこでは既成の大企業に属さない若者たちが自らのアイデアを競い合って、次なる時代を作り上げたのであった。
ここで注目しなくてはならないのは、彼らのビジネスのスタートは、二股や地下足袋と同じく「目前の必要」から生じたものであることだ。決して驚天動地の科学的発明から生まれたものでもないし、成果の一つ一つも科学史に残るようなものではない。反面、ビジネスの歴史からいえば、彼らの仕事は燦然(さんぜん)たる金字塔である。
こう考えてくると、わが国における「新事業創成」の進め方はいささか官僚的、事大主義と言わざるを得ない。その中心にはあくまでも「科学技術的成果」が要求されるから、ビル・ゲィツも出番はない。
思い起こせば、人類の歴史を変えた産業革命の父、ジェームス・ワットもまた一介の職人であった。この辺りで、「国の活力創造」のあり方をもう一度、机上の観念論から離れて考え直す必要がある。
'10.8.14.朝日新聞
備考:この意見には全く賛成です。