散歩道<3745>
                        経済気象台(596)・大きい政府と重い政府

 政府は、増大する社会保障費を盾に北欧型の高福祉国家の成功事例を示して、高福祉を求めるなら、高負担しかないと国民に迫っている。弱者に厳しい低負担・低福祉の米国型を望まないなら、高負担の「大きい政府」を選択するしかないともいう。
 だが、この大きな政府論には、二つの重要な問題が隠されている。
 一つは、この国の政治家に高福祉を実現できる能力はなさそうということである。無駄遣いと失政に明け暮れた自公政権はもちろん、現政権も上滑りの言葉とスタンド・プレーが目立つ一方、組合と公務員の利権を守る政党という性格を現しつつある。
 二つ目はさらに深刻な問題である。大きい政府が成功する条件は、高負担の税収が、効率的・効果的に高福祉に還元されることである。だが、この国では、官僚
*1組織が税収を吸い取るだけでなく、民がやるべきビジネスも奪い取ってきた。
 一例を挙げれば、独立行政法人というのは、民の競争活力を利用する英国エージェンシー制度を模倣したものであるが、ものの見事に換骨奪胎し、官の利権の巣窟
(そうくつ)に変えてしまった。
 従って、大きい政府か小さい政府かという以前に、肥大化を続けてきた官僚組織という「重い政府」を「軽い政府」に改革しなければならないのである。
 同時に、「弱い政府」から「強い政府」へと変貌
(へんぼう)しなければならない。近代政府は、主権者たる国民の福祉を増大させることを使命とすることが、これを効果的・効率的に行う行政機構が強い政府である。
 税金というヒトのカネを自分たちの権益拡大に利用する重くかつ弱い政府には、これ以上の資金を任せてはならない。

'10.7.14.朝日新聞

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