散歩道<3481>

                   経済気象台(550)・政治と経済の対話を

 あるセミナーで大手企業の社長が若い経営者を前に、企業の果たすべき役割は一人でも多くの従業員を雇用すること、そして1円でも多くの税金を国家に納めることだと語っていた。あの松下幸之助翁の言を持ち出すまでもなく、企業活動を通じて社会の発展に貢献し、その事業の健全な再生産のために利益を上げ、税金を納めることで社会全体を支えていくのが企業の果たすべき使命である。その事業のを支えるのは人であり、従業員にとっては企業は生計の基盤となる。わが国の経済はその企業活動の上に成り立っているといっても過言ではない。企業は雇用の圧倒的な部分を担い、また税収においても企業の納める法人税や企業に席を置く人たちの所得税、あるいは企業活動に関連する諸取引税などが大きな割合を占めている。住民税や固定資産税など地方税収入も直接間接に企業に負うところが大きい。輸入のために不可欠な外貨も彼らが輸出や海外事業を通して稼ぎだす。
 つまり我が国が直面している課題、失業率の高止まりや新卒者の就職難、税収の異常な落ち込みなどはすべて産業界が元気にならなければ解決しないということである。
 かかる状況にあって政府に望まれるのは産業界の意見に真剣に耳を傾け、高度医療福祉社会や低炭素社会の実現、片や産業空洞化の阻止や地域産業の再生など、大きな方向性を彼らと共有しつつ一体となって具体的に戦略を練ることである。その実現に向け官民を挙げて取り組むことで経済再生を果たしていく、そうしてこそ中期的な財政展望もより現実性のあるものとなるだろう。産業界には既にその準備もあるようだ。今必要なのは政治と経済の対話である。

'10.2.24.朝日新聞