散歩道<3234>

                        経済気象台(510)・問題は水準なのだ!

 GDPは年率23%で成長している。成長率でみれば、すでに日本経済は危機を脱したように見える。
 しかし、経済活動の水準は、回復というにはほど遠い。危機前のピークと比べると、生産活動は8割、実質GDPは9割の水準にとどまる。景気が現在のペースで回復を続けても、危機前に戻るには何年もかかる。日本経済は、今後しばらくの間、過剰供給力を抱え続けることになる。
 その間、日本経済には何が起きるのか。設備能力を適正水準まで削減するため、企業は新規設備投資を大幅に削減するだろう。雇用や賃金はさらに抑制されるに違いない。過剰供給力の削減はまた、事業の絞込みや金融再編、競争力を失った企業の市場からの退出、すなわち経営破綻
(はたん)を不可避のものとするだろう。ちなみに、90年代後半以降のいわゆる「三つの過剰」調整期においては、約1割の企業が消えていった。その過程で金融機関が抱える不良債権が再び拡大し、金融システムに大きな負荷が加わる可能性も大きい。
 つまり、最悪期を過ぎて一旦回復しかけた日本経済にしつこい景気停滞圧力が加わるということである。その中で海外景気の回復ペースが鈍ったり、景気対策の効果が薄れたりすれば、国内景気は容易に二番底に陥るだろう。
 日本経済の基盤はそれだけ脆弱
(ぜいじゃく)だということである。つまり、成長率ではなく水準から見れば、日本経済は今なお危機のまっただ中にいるのだ。
 英国の中央銀行のキング総裁は、「問題は成長率ではない。水準なのだ!」とのべたという。新政権の経済閣僚にかみしめてほしい言葉だ。


'09.10.29.朝日新聞