散歩道<3137>

                        経済気象台(490)人を救うデザイン

 商業主義とデザインの関係は深いが、商品との係わり合いから、その役割を三つに分けることができる。商品を魅力的に見せる「売るデザイン」。効率的に商品が機能しやすくなる「使うデザイン」。さらに、リサイクルあるいは、ゴミとして分別を容易にする「捨てるデザイン」である。
 しかし、商業主義の中で、数え切れないほどのデザインが使い捨てられてきたのも事実である。
 それは、商品を求める人たちが飽きやすく、常に新しいデザインを求め、それにあわせて、企業も商品や広告のデザインを短いスパンで変えていった結果である。
 今、公共的、福祉的な役割を果たすデザインの力が注目されている。博報堂を中心としたプロジェクトグループが全国の学生とともに、震災や被災者に役立つデザイン提案をしている。そのなかで、実際に被災現場で起こる問題をデザインで解決しようとしている。
 その一つが被災時に不足する水を識別するために、その水が飲料水なのか、生活用水なのか、あるいは、廃水用なのかを色のついたシールで知らせるアイデアである。
 また、避難所内で他人と近距離にいてもプライバシーを守るために、間にネットを張るネットパーテーション。幼児ごと他人の眼から隠し、周囲を気にせず授乳できる大きめの授乳服。
 そして、被災時に人の世話になったら、感謝の気持ちを形にした星型シールを避難所の壁に張り、夜になれば、壁一面に感謝の星が輝くプランなども提案している。
 人を救うデザインには、目新しさは求められない。むしろ、飽きるくらいに共有化されるほど、その機能は発揮される。

'09.9.2.朝日新聞