散歩道<2963> 
 
                      経済気象台(456)・逸脱する政府の範囲

 「100年
に一度の経済不況」克服を政治的スローガンに、麻生首相は昨年来、生活対策や生活防衛緊急対策、あるいは09年度の補正予算と、矢継ぎ早に次々と景気対策を打ち出している。当初予算が成立して間もないこの時期に、15・4兆円規模の補正予算はまさにバラマキの様相を呈しているといわざるを得ない。これまでの緊縮予算編成の欲求不満を霞ヶ関の省庁が、一挙に解消するかのような勢いである。
 この過程で何が生じてきたであろうか。短期間で景気対策を実施しようとすると、必然的に何でもありの大盤振る舞いになる。たとえば、その中身を見るとエコカーや省エネ家電製品などの買い替え補助のためにかなりの規模の財源が手当てされている。いくら景気刺激のためとはいえ、こんな一部の人々の個人便益のみを増やすために国民の税金(国債でもいずれ税金で負担)を充当するのは、疑いもなく政府のやるべき本来的な仕事ではない。同じ財源を使用するなら、個人的な救済にはなるがその恩恵が国民全体に広がる医療・介護やあるいは喫緊の課題である失業対策にあてるべきだろう。
 今回の施策全般の内容は、明らかに政府の範囲を逸脱している。政府の本来の仕事は、市場で供給されない公共的な財・サービスを税金でそのコストをまかない広く国民に提供することにある。それが国民から徴収する税金の使い方というべきものだ。個人的な便益のみを提供する私的財・サービスなら、自分のカネをだして市場から購入すればいい。かかる条件からいうと今後の深刻な財源問題もあり、今回の景気刺激にかこつけた人気取り的な歳出のバラマキはまったく賛成できない。

'09.5.15.朝日新聞