散歩道<2949>
ザ・コラム・市場と共同体(2) (1)〜(3)続く
見逃せぬ相互依存関係
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今回はこれらの誤解を検討してみたい。まず一つの誤解だ。たとえ話だが、ある日突然、日本中で信号機が故障し、交通事故が多発したとする。その時、「自動車社会が間違っていた」「自動車に乗るのをやめよう」ということになるだろうか。信号機の故障原因を突き止めえ修理すべきだ、というのが普通の反応だろう。
経済危機が起きて「市場経済システムはダメだ」というのは、信号機の一斉故障で事故がおき、「自動車社会を反省しよう」というのと同じくらい極端な議論だ。では今回の経済危機で「信号機」に相当するのはなんだろう。
市場経済が機能するためには、市場を支える「公共財」が必要だ。「貨幣」という公共財が壊れ、市場経済が回らなくなった。「貨幣」とは、金融システムへの信用に基づく決済サービスと言い換えてもよい。これが壊れて世界は金融危機になった。
市場経済の世界の「信号機」(貨幣と信用)が壊れた為に危機が起きているのだから、信号機を修理することが求められている。それは味気ないが実務的な問題である。危機を、市場経済システムを否定する口実にしてはならないのである。
二つ目の誤解は、少し複雑である。
従来は、人々の助け合いを促し、いざという時にセーフティーネットを与えるのは、家族や血縁、地域社会などの共同体の役割だった。それが経済の発展とともに、世界中で壊れてきた。日本では遅くとも70年代くらいには、伝統的な村落共同体の崩壊が顕著になったといわれる。
確かに市場経済の発展によって共同体の崩壊が促されたことは否定できないが、一方で市場と共同体には深い相互依存の関係がある。両者を単純な対立物ととらえる見方に立つと、相互依存の働きを見逃し、われわれは対応を大きく誤ることになる。
その相互依存とはどのような関係なのだろうか。
'09.5.28.朝日新聞・経済産業研究所上席研究員・小林 慶一郎氏
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