散歩道<2944>

                      経済気象台(449)・貿易赤字を歓迎する

 2008年度の貿易収支(通関ベース)が、28年ぶりの赤字となった。世界経済もいずれ回復するだろうから、このまま赤字が増え続けることはないとしても、年間10兆円もの黒字を稼ぐ時代に戻ることは、しばらくの間ないだろう。
 貿易収支の赤字化、黒字縮小の悪影響を心配する向きは多い。たしかに、外需という成長エンジンが衰えれば、経済成長率がさらに低下する懸念がある。しかし、悪いことばかりではない。
 第一に、これまで輸出拡大に振り向けられていた経済資源(ヒト、モノ、カネ)が、内需に向かうようになる。振り返れば、02年
07年の輸出依存型景気回復は、雇用・賃金の削減によって企業の競争力・収益力を強めたこと、換言すれば内需を犠牲にすることによって、可能となった。その帰結が、巨額の貿易黒字だった。
 今後は、これまでのように輸出だけに頼ることが困難になる。だとすれば、経済政策や企業戦略の焦点は内需に向かうだろうし、内需の中核である個人消費活性化のために、雇用や所得にも配慮がなされるだろう。その結果、長く渇望されてきた内需中心の持続成長が、実現する可能性がある。
 第二に、日本経済が円高のメリットを受けられるようになる。貿易黒字の下では、円高は輸出サイドにより大きな悪影響をもたらし、経済や収益を悪化させる要因だった。しかし貿易赤字・黒字縮小の下では、輸入額削減という円高メリットが、より大きく顕現するようになる。それは輸入企業の収益拡大や物価安定、多様な輸入品の流通拡大を通じて、内需を刺激する。
 貿易赤字は、日本経済が変わるきっかけになるかもしれない。

'09.4.29.朝日新聞

関連記事:散歩道<195>社会の活性化・公共事業・地震に耐える住宅を世界のために作る、