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社説・21世紀のビジョン・改革のバイブルの夢心地
政府の経済財政諮問機関が纏めたものである。改革を怠ると日本は今後「元経済大国」に転落してしまうという。改革を進めれば2030年には新しい躍動の時代を迎えるというものである。描かれたシナリオによれば、日本はアニメゲームや技術力の力を生かし、「文化創造国家」になる。お年寄りが健康で80歳まで伸び、金持ちならぬ「時持ち」が、楽しく働き、よく遊ぶ社会になる。夢は大きい、「こうなります」と書いてあるだけで、どうしたらそうなるかが、解からない。今は長期ビジョンは書きづらい。手元不如意のご時世にあえてビジョンを書くならその成否は、出発点に置く時代認識の深さによる。小渕内閣の時は「21世紀日本の構想」は一本筋が通っていた。「20世紀は『組織の時代』、21世紀は『個人の時代』という時代認識である。これにもとずいて「自立と協治(ガバナンス)」という理念が立てられ、例えば教育の大幅な自由化といった大胆な具体的政策が提言された。政府税調が纏めた「わが国経済社会の構造変化の『実像』について」は現状の把握に徹した分析だが評判はいい。「何かが大きく変容しつつある」。それは「量的拡大」の限界であり、「標準家族」の崩壊であり、「将来に備える」から「今ここで楽しむ」への変化であり、「十人一色」(じゅにんひといろ)、「十人十色」(じゅうにんといろ)、さらに「一人十色」(ひとりといろ)への変化である。今回のビジョンが見るべきものは時代認識ではなく、もっと即物的な計数の部分にある。巨額な財政赤字の解消を検討した「参考試算」ことである。今の政府目標は2012年基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化するとして。過去の借金の返済や利払い以外は、あらたな借金をしなくてすむ状態だ。そのためには、「22兆円程度」の赤字を解消しなければならない。ビジョンはこの目標達成を「発射台」として、その後、30年までの試算を示すのだが、どうやってその発射台までたどりつくのかが、これまではっきりしていなかった。増税はせず、経済成長や歳出カットでたどりつけますという説明だが、本当かねというのが大方の見方だった。「α%増」。参照試算は、発射台に到達するには消費税アップが避けられないのではないかという見方を初めて認めた。あくまで試算であり、経済は生き物だから、「相当な幅を持って理解されるべき」だが、それにしても現実は厳しい。こんな借金国家を次世代に残すのか。「次世代への責任」として財政改革に取り組もうという動きもある。ところが小泉首相が「在任中は消費税を上げない」の一点張りである。その姿勢は財政再建のみならず、社会保障制度改革をめぐる議論の足も引っ張っている。来年秋の任期切れまでの時間を無駄にしていいのか。首相自身も、数字やグラフの数々と格闘していただきたい。17.5.22
朝日新聞