散歩道<2890>

                         経済気象台(431)・薬石の言

 3日ワシントンで会談したオバマ米大統領とブラウン英首相は、4月のロンドンで開く金融サミット(G20)に向けて国際的な金融規制の構築を目指す方針を確認した。オバマ政権発足待ちに終わった昨秋のサミットからは前進だが、機能不全に陥っている世界の金融システムの再生策だけでは不十分だ。
 今の世界軽罪危機は実は単純な足し算・引き算から説明がつく。これまでの世界経済は、貯蓄もせずに輸入品を貪欲
(どんよく)に買ってくれる米国民の浪費で日欧中その他世界が潤う形だった。ところが金融破綻で打撃を受けた米国民がサイフのひもを締め始めたので、対米輸出が激減した。引き算だ。そこで今度は輸出国の国民が米国民の浪費で得た貯蓄を使って足し算し、米国民が買わなくなった自国製品を買わなければ不況を克服できない。
 自国製品を買わせる手っ取り早い方法は輸入制限だから、各国政府は保護貿易の誘惑にかられる。しかしグローバリゼーション下では保護主義は通用しない。公共事業用鉄鋼は米国製とするバイ・アメリカン条項も、結局は米鉄鋼業界に進出しているミッタルなど外資を潤すことになる。
 保護主義が非現実的だとなると、次の手段は自国通貨の為替相場を安く誘導して輸入価格を高くする為替操作だ。世界一のドル保有国中国の人民元動向に目が向くのも当然だ。
 だから金融システムの規制だけでなく、台頭する保護主義や政策的為替操作も同時に監視しなければならない。世界経済の多角的な痛みを、各国がどの分野でどこまで分担するのか。せっかくのG20.その役割を強化するよう日本政府が薬のように効く「薬石の言」を提唱できたらと願うのは無理だろうか。


'09.3.12.朝日新聞