散歩道<2863> 

                      経済気象台(420)・残照に輝くドル

 世界の金融機関が抱えた、米国の住宅ローンにかかわる損失は2兆jを超えたようだ。それでも、いまだに底を打ったとはいえない。住宅価格がその後さらに下がり続けること、深刻な不況から失業率の大幅上昇が控えているからだ。国有化も含め、米国政府による銀行救済策の議論も盛んである。 しかし、このような深刻な金融危機に陥っても「ドル危機」とは無縁であり、ドルは案外強い」とさえ見られている。理由は、世界中でドル資金の調達を急いでいるからだ。
 ここ10年ほど、米国は貿易赤字を手放しで拡大してきた。その結果、中国をはじめアジア諸国や産油国に巨額のドル資金が流入した。しかし、内需に向けて使われたのは限られており、ドルのまま再び海外に向かった。
 ドル資金が世界中にあふれた結果、市場の利回りが大きく下がり続けた。そのために、激化する運用競争の中で少しでも高い利回りを求め、サブプライムローンを組み込んだ仕組み債などリスクの高い金融商品を筆頭に、借金を幾重にも重ねて運用資産に組み入れてきた。
 ところがリスクが顕在化し、担保に供する金融商品の値下がりが始まった。その結果、銀行から借金の返済を求められる。金融商品を売却しても、その目びりした代金では借金を返し切れず、新たにドル資金を調達する必要に迫られている。
 このような動きが重なりドル資金の需要が急増し、ドルの強さを引き起こしているようだ。しかし、現在のドル資金需要が峠を越すと、一転してドルの余剰が目立ってくるのではと懸念している。
 今のドル高が今後とも続くかどうか、しっかりと見極める時期にある。

'09.2.4,朝日新聞