散歩道<2726> 
                     希望は女性にあり  新春対談・吉田秀和さん*丸谷才一さん(2)           (1)〜(3)続く
  
      1、新しい流域を描ける(文学)・2、母権的なもの現代にも(6千年ぶりの転換期)、3、男が縮まってきた(時代を変える力)。

2、母権的なもの現代にも(6千年ぶりの転換期)、
丸谷 なぜ最近、世界中で「源氏物語」があれほどもてはやされるのか。バハーオーフエン(スイスの法制史家にして古代学者)によれば、「源氏物語」千年紀についての講演で、彼の、人類の歴史は6千年も父権的時代が続いているという説を援用しながら、「源氏物語」が広く読まれる背景には、人類そのものが6千年ぶりに母権的なものに変わろうとしている一つの大きな兆候ではないかと話した。
吉田
 6千年とは、
丸谷 彼の説ではローマ、ギリシャ、エジプトの神話や象徴を研究したあげく、歴史の原初に自由な性交渉が行われる社会形態があって、その後、母親が家族の長であり、社会の指導者であり、偉大な女神であった文化があった。母権的な時代です。その後文明世界の歴史全体にわたって父親および父権的なものが権力を持つ父権的な時代が6千年続いた。私たちの知る人類史はみな父権制で、その中に悠遠の昔の痕跡としての母権制社会がまだらに残っている。そういう具合に考えれば壮大な人類史の仮説としての人類史が分かる。

・・・・源氏物語が書かれた平安時代ごろの文化は、母権的な色合いが濃かった。
丸谷 平安時代のずっと前は日本も母権的な社会だったんでしょうが、父権的な儒教や仏教が入ってから、父権的な社会に代わっていく。だけど、そう徹底的に入ったわけでないから、随分たくさん母権的なものが残っていた。それが平安時代のお女中の世界には特に色濃く残っていた。だから「源氏物語」という面白く、世界でも珍らしい文学ができたんだと思う。
・・・・武士の時代に代わると?、

丸谷
 非常に父権的な時代になるわけでう。それが明治に引き継がれ文学にも父権的なものが反映される。
吉田 でも、それは男の作家がつまらぬこととは違う。
丸谷
 母権的なものは現代日本にもかなり残っています。和歌の後身である短歌や、その分かれである俳句が盛んで、新聞も毎週1回読書の投稿を載せている。谷崎潤一郎の「細雪」が、何度も映画化されたり、芝居になったりして人気があるのも、女系家族の物語だからです。「サザエさん」の人気も同じ。日本人の生活の中にある基本的な何かを上手にとらえていて、悠遠の昔の祖先のあり方をしのび、懐かしんでいるのね。

   
'09.1.1.朝日新聞・

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