散歩道<2692>

                         経済気象台(407)オバマの真のミッション

 オバマ氏が、次期米大統領に選出された。その若さと賢明さ、ぶれない政策スタンス、そして比類なきカリスマによって、目前の困難や長期的課題に、新大統領が迅速に果敢に取り組むことを、世界が期待している。
 オバマ氏の最初の試練は、金融危機、経済危機への適切な対応だ。金融システム正常化を巡る財務省の対応はなお定まらず、市場は不安定のままである。一方で、経済はマイナス成長に陥り、大手企業の経営も急速に悪化している。景気対策や企業救済に、政府がどこまでコミットするのか。かってない混乱の中で、オバマ氏は歴史的な判断を下さねばならない。しかし、オバマ氏が抱えるミッションは、より大きく困難なものである。
 それは、米国経済の衰退をいかに止めるかという課題であり、それが出来ない時には、経済衰退という現実に、米国をどのように軟着陸させ、企業や家計にどう折り合いをつけさせるかという課題である。米国経済はこれまで、企業や個人が革新的で粘り強い努力を積み重ね、幾多の困難を乗り切ってきた。それを可能にしたのが、競争を促す市場であり、民間の努力を妨げない政府や中央銀行の政策スタンスだった。しかし現在は、企業や個人が自力で立ち直ることが出来ないほど、マクロ経済や金融市場が大きく痛んでいる。
 そして、米国経済が衰退のトレンドから抜け出せないとしたら、企業や個人は、経済の縮小、生活水準の低下、福祉の劣化、世界における経済的地位の低下という激しい現実に向き合わねばならない。米国の再生という希望を掲げて大統領になるオバマ氏の真のチャレンジは、そこにある。

'08.11.19.朝日新聞