散歩道<2690>
                         経済気象台(405)サクセス・ジレンマ

 失敗は成功の母」というが、逆もまた真である。1980年代は日本の時代であった。日本からの怒涛(どとう)のようなハード製品の流入に、米国などは震撼した。アンチテーゼとして構築されたソフトを中心とした情報化社会にその後、日本は苦汁をなめることになる。
 「ソフトがなければ、いかなるハードもただの箱」などというキャッチフレーズが叫ばれた。その情報化社会が、いま危機を迎えている。
 ある事業、分野で一世を風靡するためには、そのコンセプトはユニークでないといけない。だが、モデルがユニークであればあるだけ過信を生み、事業を暴走へと導き、時に破滅へと至る。これを「サクセス・ジレンマ」という。その意味では、あらゆる事業は成功している時が最も危ないときである、と言えるであろう。「一代の寵児が奈落の底に落ちていった例は枚挙にいとまがない。「勝ってかぶとの緒をしめよ」とはよく言ったもので、その衰退の原因は、絶頂期において作られているのである。
 成功は失敗を生み、その失敗はまた成功の母となる。その連続が、歴史を作っていく。こう考えてくると、現在やるべきことは、いたずらに悲観的になることではない。ジレンマの反転に備えるべきだ。
 「オバマの賢人」とも呼ばれる米国の投資家、ウォーレン・パフェット氏は、失敗を成功へとつなぐ達人のようだ。
 彼の投資哲学は「良き会社の株」を「底値」で勝って「保持すること」である。そのパフェット氏が、資金の出し手として動きだした。ジレンマ反転の時期に思いを巡らすときが来たようだ。


'08.11.18.朝日新聞

関連記事:散歩道<320>-2、アーカイブで、会社の資料等を見直す・時期が早すぎたため採用されなかったアイデアがいかに多くあるかこのことを思い出した。