散歩道<2604>
経済危機の行方・規制緩和と金融工学が元凶(2) (1)〜(3)続く
赤字いとわぬ財政手支出 不可欠
この危機を終わらせるためには何が有効なのか。それは、大恐慌を克服した「赤字をいとわない財政支出」だろう。極端にいえば、経済学者が「ヘリコプターマネー」と呼んでいる、紙幣を増刷してばらまくような大胆さで財政支出をすることだ。
大恐慌を克服したのは戦争のおかげだという人がいるが、そうではない。大恐慌当時、私はシカゴ大学の学生だったが、自分が学んでいる経済学と、社会で現実に起きていることとの大きなギャップについて、深刻に悩んでいた。周囲では、3人に1人以上が失業していた。
それほど高かった失業率をひとケタまで減らしたのは、33年に就任したルーズベルト大統領の政策だ。それは戦争前のことで、戦争の脅威も切迫していない時点で着手されたのだ。
(第1次大戦で敗れたドイツの)ヒトラーは報復戦争の準備をするために、際限もなく金を使った。しかし、ルーズベルトがとった政策は、同じ赤字財政であっても、公共事業農業支援計画を通じた巨額の支出だった。それが資本主義を救った。
国のお金を何に使うかは、その国民が選ぶべきことだ。しかし、無駄な事業でなく善い目的に使うのが、賢明な国民の選択であることは言うまでもない。
今回の危機の克服に当たっても、時間はかかったとしても結局、財政支出はが拡大されるだろう。ルーズベルト大統領の雇用政策も、目標実現に7年かかった。前任のフーバー大統領は、ケインズをマルクス主義者呼ばわりするような人物で、恐慌克服になんら有効な手を打っていなかったことが響いた。本来は(株価暴落直後の)30年から32年までに恐慌対策を打つべきだったのだ。
'08.10.25.朝日新聞・マサチュウセッツ工科大名誉教授・ポール・サミエルソン氏
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