散歩道<2564>

                      私の視点・小泉氏引退「劇場政治」の呪縛解けるか(3)              (1)〜(3)続く

 長期政権を維持してきた自民党だが、小泉氏が首相に就くころには社会と不適合を起こし始めていた。例えば、保護や再配分、規制などを中心としてきた政策に、都市のホワイトカラー層は不満を高めていた。小泉政治はこの層に訴えかけた。農家や中小起業より、都市層の積極的な支持を得られる政党へと自民党の構造転換を図り、新しい時代環境に合うよう党を作りかえようとしたのかもしれない。
 政治構造から見ると、小泉政治の強さには、90年代以降に進んだ衆院への小選挙区制導入や首相官邸機能の強化によって、自民党総裁と首相の権限が強まったことが挙げられる。だが、それだけでは強い政権は生まれない。
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 小泉元首相と同時代の政治家ブレア前英首相がいる。ブレア政権の経済政策を実質的に支えたのは現在のブラウン首相
(当時財務相)で、経済政策などの知識や能力ではブラウン氏の方が優れているとの評価だが、国民に訴えかけるコミュニケーション能力ではブレア氏の方がはるかに高い。ブラウン氏はいま苦境にたたされている。
 政策に強いというだけでは首相として適格とは見なされない。国民とのコミュニケーション能力、つまり人々に直接訴えかけ、人々が求めるものをうまく引き出す能力が求められると言えよう。
 今後、高いコミュニケーション能力を持つ人物を自分たちの代表として「使う」のか、あるいはその人物の力を源泉として、統治の道具として自分たちが「使われる」のか。小泉政治と国民との関係をふり返った場合、「使われた」面があることは否定できない。この教訓を生かせるか。これは今後、我々自身が試される課題だ。


'08.10.4.朝日新聞・東京大准教授・内山 融氏
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