散歩道<2451>

                          経済気象台(354)・インフレ耐性を欠く新興国

 原油高・食料高を背景に、インフレ圧力が世界で強まっている。欧州中央銀行は、インフレ率(4%)が目標(2%)を大きく上回っていることから政策金利を引き上げた。米国FRBも、景気低迷にもかかわらず、利下げをしなかった。それは、世界経済の問題が、サブプライム*1に起因する信用不安からインフレへと変わりつつあることを示している。
 ただ、インフレがより深刻なのは新興国である。ベトナム26%、ロシア15%など、すくなからぬ国が2けたインフレに苦しんでいる。それ以外の国も、インフレ率は大きく高まっている。
 その背景には、原油・食料価格の上昇だけでなく、賃金の上昇、エネルギー製品などに対する財政補助金の削減、通貨安など、様々な要因がある。とりわけ、目覚しい経済成長にもかかわらず低賃金で甘んじてきた労働者が、所得格差の拡大やインフレによる購買力の低下をみて、高い賃金を求めはじめたことが、インフレ圧力を根深いものにしている。
 振り返ると日本では、第1次石油危機後のインフレと賃上げの悪循環が「狂乱物価」をもたらしたことの学習効果から、その後は、第2次石油危機後も現在も、賃上げは抑制されたものとなり、インフレは落ち着いている。そのような経験がない新興国は、インフレに対する耐性を欠いているといっても過言ではない。
 結局新興国は、かっての先進国のように、スタグフレーションの時代を迎えるのではないか。それは、投資資金の流出などを通じて、新興国経済のあしかせになると同時に、新興国からの輸入に依存する先進国でも、インフレ圧力を高めることになる。今後の世界経済を楽観することはできない。


'08.7.10.朝日新聞