散歩道<2424>
経済気象台(339)・政府内にも円高活用論
これまで円高恐怖症が強かった日本、95年には1ドル80円をわりこみ、以来長期間、大規模な為替介入をして、何とか円安水準に戻そうとしてきた。近年では「105円から125円のレンジが望ましい」との暗黙の了解がなされていた。
その日本に微妙な変化が見られる。円相場は先月又100円に接近したことがあるが、当局からは特段の危機感が伺えず、むしろ円高水準へのシフトを容認するムードすら伺えた。その背景には、円高を活用したいお家の事情がありそうだ。
第一は国債の円滑消化。このところのインフレ傾向で、世界の長期金利が上昇傾向にある。その流れで日本の国債利回りも上昇警告(価格は下落)を見せている。相場の下落する商品にはなかなか買い手が付かない。そこで海外のファンドなどに日本国債を買ってもらおうということなのだが、日本の金利水準はあまりに低く魅力的でない。そこで為替を円高傾向とすれば、低金利でも海外の投資家には為替差益がのって、全体の運用利回りが高まる。
第二は原油など資源価格の上昇を円高で吸収したい。原油価格が1割上昇しても、円が1割上昇すれば円での輸入価格は上がらない。昨今の原油高でガソリン税復活の影響が目立つようになっている。その不満をかわすためにも原油価格の上昇を水際で抑えたい。
第三は日本経済の地位低下だ。かって日本の一人あたりGDPは世界一であったが、1昨年は18位まで低下した。バブル崩壊で長期間経済が低迷したこともあるが、円安がよけいドル表示の金額を小さくしている面が加わっている。お家の事情とはいえ結果的に輸出企業より個人の利益を重視することになる。
'08.6.6.朝日新聞