散歩道<2405>
経済気象台(335)・スタグフレーション再考
スタグフレーションといえば、70年代に論じられたテーマだ。それが今、再び論じられている。景気と物価はトレードオフ関係のはずなのに、景気後退と、物価上昇の同時進行は、経済学的常識に矛盾しているといわれた。景気が減速しそうなのに原油や穀物価格が高騰を続けている今日、この現象への危惧(きぐ)が増大している。これにとらわれると、財政・金融政策が有効でなくなるからだ。
これは実体の構造を考えれば矛盾でもなんでもない。時間軸で因果関係をどう見るかということだろう。原油は値上がりしたからといって、必需品でもあるのですぐに需要が減るものでもないし、埋蔵量の制約の下で短期的に供給拡大する動機は生産者にはない。そうなると、これらの価格は下方好調・上方弾力的となる。景気後退の初期の原因が何であれ、ある時点からはこの基礎的資源の価格上昇が景気後退の原因、あるいは景気の足かせになるということだ。
これを避けるための対策は、基礎的資源の価格上昇を抑えるということしかない。価格統制のことを言っているわけではない。将来、価格上昇は継続しないというメッセージを為政者が明確に示すことである。これまで、このメッセージは決して強くなかった。原油価格の高騰を利益と考える人々がアメリカを支配しているからだ。
そうなると、洞爺湖サミットの歴史的役割りは極めて大きい。地球環境問題とエネルギー問題の一体的な解決を図ることはもちろんだが、原油需要、穀物需要を増やさない、いやそれどころか減少させることにつながる、代替えエネルギー開発というメッセージを強く発信できるか、議長国日本がそれをリードできるかが問われている。
'08.5.23朝日新聞